【主催:(社)北海道建築士会函館支部 青年委員会】
社団法人 北海道建築士会 函館支部青年委員 小川 聡
事業の経緯: この函館工業高校を対象とした交流事業は、初期段階に置いては人材発掘・就業先斡旋・就職率アップに主眼を置いた活動として発足した。しかし、在学生の進路希望が就職から進学にシフトしてゆく中で、進路相談が主体の事業展開に行き詰まりが懸念されはじめ、二年前に母校愛にあふれる村山委員(現青年委員長)が担当した際に、活動方針の転換が示されるに至った。
二年前のその時、村山委員は短期的な将来展望を示して導く以上に人生の糧になるべくものとして建築を考え・感じて欲しいと切に願い、対面対話形式により建築について意見を交換するという手法を切り開き、一応の成果を収めることが出来た。
昨年度はこれの発展系を試み、母校愛を受け継ぐ佐藤委員・末吉委員が村山青年委員長の下で事業を展開。やはり同校卒業生である宿村氏の発案から、都市計画という切り口から市街を形成する建築の意味を考える機会を学生に与えつつ、参加した建築士会会員にも新鮮な視点を提供するという形で事業を成功させることとなった。
また、この際の記録は全道に発表を通して知られることとなり、今年における新たな試みを期待する声はさらに高まることとなった。事業の発展に情熱を燃やす村山委員長は、母校愛に燃える卒業生が続けてきたリレーの新たな走者として、今委員に今年度の成否を託すこととしたのである。
事業の概要: 昨年の2級建築士製図課題をベースに学生向けの調整を施したエスキス課題を用意し、課題を学生に見つめて貰うことを通じて、住宅設計において建築士が社会的に求められる配慮や誠意の形を感じ、将来の進路として・社会の随伴者として建築士の存在を認識して頂くことを念頭に置いた。
現地集合後、学校側への挨拶と会場設営を行う傍ら、最終的な方針を確認して後に事業を開始。学生と対面しながら檀上から学校側挨拶・青年委員長挨拶・司会進行者より各員自己紹介を適時こなし、事業遂行の最初の勘所である今委員による概略説明が開始された。
今委員は昨年度受験を経験した自分の体験に立脚し、試験の概略を説明した上で学生に訴えかけるようにエスキス工程の勘所を説明した。教室に入った当初はやる気の薄い学生が大半であるようにも見て取れていたものが、今委員の誠実・実直な語り口に引かれ、話の終盤には何割かの生徒が興味と認識を獲得しているように感じられた。
掴みとしての概略説明に一応の効果が見られたおかげで、その後の進行が、実際の企画者意図より熱の帯びた物に変化し始めたのは、嬉しい誤算としてこの後の結果に影響を及ぼすことになる。
さて、今委員の概略説明が完了した後、教室を授業形式からグループ形式に模様替えし、Aパート「個別考察」が開始された。
個別考査では生徒個々人が、課題を読み込む中で自身が触発されたイメージをかたちにしてゆくことで、後半のBパート「グループ考察」における話し合いの素地を形成することが大枠の目的となる。
学生には様々な個性があった。サポート要員としてテーブルに配置された建築士を捕まえ積極的に質問する学生。頭を抱え込む学生。黙々と書き始める天才肌の学生。ぼんやりする学生。寝る学生。周囲と活発な議論を始める学生。
この場では、外構計画以外の部分についての具体的指導をなるべく控えて、学生自身の立場のみを重視した作図をさせて行く方針が事前には確認されていた。自分らしい考え方を生かせるように「自由」に書き入れて貰い、荒削りな素材を後半に生かして貰うことを企画していたためだ。
だが、個性の差は我々の予想範囲を超える斬新な展開を各所で示し始め、外構計画において敷地ギリギリに建物を配置する計画が散見され、我々が想定できないような居室の面積構成が次々と提案されていた。
趣味室の趣味についても自由な指定を学生に求めた結果、カラオケ道場からアウトドアな趣味室に至るまで幅広く立体的に展開し、後半用意した時間では収拾の効かせようが無さそうな範囲まで、制約のない自由な良心は開放的な可能性を示唆する状況となっていた。
休憩時間に入り、我々も多少の対策を模索した。当初考えていた発表時間を削り、他グループ見学についても縮小することを話し合い、行事が形になるなどという、ちっぽけな団体としての体裁理論を投げ捨て、学生が可能性を発露する切っ掛けがこの場で形成されることに主眼を置いた対応を選択した。
後半のBパート「グループ考察」は予想を上回る議論が各テーブルで展開される事となった。収拾を付けて図面としてまとめるために、何を選択して何を捨てるのか。捨てることが生かす何かを議論の中で読み取りながら、ベストを目指すコンセンサスの確立がどれほど困難な物なのか。
これを体験して貰う中で建築への興味と視野を引き延ばすという事業の意図は、この段階でほぼ完成型に届いた感がある。その状況の創出を優先したがゆえに、当初の予定にあった学生の発表時間は削られたが、事業の達成感についてはなかなかのものであった。
事業の感想: 今回の事業に置いて反省すべき点は、スケジュールに対する読み込みの浅さであり、今後同様の事業が立案されたときには配慮を心がけたい。逆に、運営として良かった点は、形にとらわれない柔軟な判断により、学生の意見と意識を相当のレベルまで喚起できた部分ともいえる。
最後に。新鮮な発想と着眼点で我々に新緑の息吹を吹き込んでくれた函館工業高校の闊達な学生・学校関係諸氏には感謝を。そして母校愛で行事に並々ならぬ心意気を示してくれた函館工業高校OBである参加者にはエールを、送りたいと思う。
事業名称: 平成16年度 函館工業高校生との交歓会
日 時: 平成16年3月16日(火) 8:00〜12:00 場 所: 函館工業高校
会 費: 無 料 参加人数: 参加者9名 事業担当: 今・小川
事業報告: 小川 聡 CPD : 対象行事(8点) 教 材: 前年度2級建築士製図試験学習資料(室蘭支部青年部提供)
報告者プロフィール
氏名:小川 聡 勤務先:株式会社 道南工業
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